アフター6

前々から予定されていたプレゼンテーションがなかなかうまくいったので、勢いで18時にオフィスを出る。まだ外は明るい。ハードに働くのも嫌いじゃないけれど、ときどきこんなふうに早く仕事から上がると、やはりいいなあと思う。というわけで、前回のポストから間もないけれど、ちょっとした雑文をここに綴る。

 

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とある偉い人から、創薬ベンチャーのビジネスがいかに難しいかという話を聞く。要するに薬品、とりわけブロックバスターの開発はほぼギャンブルなので、初期投資を回収できる可能性が極めて低いという話である(ほとんど常識だが)。一方で、いわゆる日本の大学におけるバイオ研究のレベルは、諸外国に比べても極めて高い水準にあるとのこと。それなのになぜ画期的な新薬を送り出せるベンチャーが出てこないか、という問いが当然浮かぶ。彼いわく、「これまで大学と企業が連携して、研究と開発とを結びつける努力があまりされてこなかったのが原因では」とのことだった。

 

何かに似た話だなあと思って、僕が真っ先に思い浮かべたのは、中田英寿がキャリア晩年に日本代表について発した言葉だった。「彼らの多くは、技術もすごく高いし、経験もある。でも戦いかたを知らない」――細かい内容は忘れてしまったけれど、確か彼はこんなことを書いていたはずだ。もしかしたら日本の西洋哲学研究にも同じようなことが言えるかもしれない。非常にレベルが高いというか、本国の研究者から見てもマニアックなことをしているが、それが市場に浸透しているとはあまり言えない(学術的な価値に見合った評価が世の中から得られているわけではない)。まあ哲学については、別に最近の傾向というわけでもないのだろうけれど。

 

共通するのは、アウトプットの弱さだ。アイデアや技術を現実的な価値に作り変えるという能力の欠如とも言えるだろう。もっともこれはある程度仕方のないことで、この国の教育では中等教育はおろか、高等教育でも、アウトプット志向の指導を受ける機会は限られている。それが日本の潜在能力をどれだけスポイルしているか、この国の教育関係者には真剣に考えてほしいと思う。もちろん、個人のレベルで、徹底的なアウトプット思考を内面化することである程度克服できるものだとは思うのだが、やはり中長期的にはマクロのレベルでの強化が必要だと思う。

 

☆☆☆

 

最近電車内によく掲示されていた、ミュゼのポスターのキャッチコピーが”Enjoy the girl”から”Enjoy, girls”に変わっていた。前者を見たときは、さすがに驚いてしまい「おい、これはヤバいぜ」と山手線の中でほくそ笑いをかみ殺していたが、まあ後者はなんとかギリギリセーフ…なのだろうか?微妙である。それにしても、かのエステ企業ではマーケティングも法務も機能していないのだろうか。それとも最低限の英語を読みこなせる人が社内にいないのだろうか。

 

それはそうと、モデルの女の子がやたらと可愛いのでちょっと調べてみた。池田エライザさんという名前の子。こんな年頃の女の子に”Enjoy the girl”って、おい犯罪だぜ。しかしながら世の中の若造はこんな女の子が目の前にいたらイチコロだろうなあ。でもたぶんキラキラ偏差値が高すぎて、僕は近寄れないと思う。

 

☆☆☆

 

数日前の話。娘から「ねえ、人はなぜ生きるの?」と訊かれる。

 

「ごめんね、僕もよくわかんないんだ」、僕は言った。本当にわからないのだ。あるいは、「僕はね、あなたがいるから生きているんだよ」とでも言っておけばよかったのだろうか。まあそれはなかなか美しい回答だし、確かにそう思っているので、あながち間違いとは言えない。でもそれは正答ではないのだ。少なくとも哲学の文脈においては。

 

しかしながら、小学一年生にしてそんな疑問を呈するとなると、なかなか将来が思いやられる。娘の前でヘーゲルを読むのは、もしかしたら控えたほうがいいのかもしれない。

 

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最近たるんでいるので、明日は早起きして向こう3ヶ月の計画を立てる。生きる意味がわからなかろうが何だろうが、人生は短いのだ。There’s no time to waste.