それぞれのローマたち

ずいぶんと暖かくなってきたのはいいのだが、だんだん花粉飛散量が上がってきており、また不安定な天気も続いているので、春を迎える喜びのようなものはあまり感じられない。それでもだんだん気温が上がってくると、やはり頭の中にはGLAYの”Soul Love”が流れてくるから不思議なものだ。ど真ん中のメジャー・ダイアトニックの曲なので、恥ずかしくてとても人前で歌う気などにはなれないのだが、なぜか啓蟄を過ぎるころになると、毎年頭の中にはこの曲が流れることになる。ちなみに連想するものはルーズソックス。90年代の亡霊に取り付かれているのだろう。

 

☆☆☆

 

経済学の成績について、クラスの何人かから「項目ごとのスコアを開示してくれるよう、先生に言ってくれないか」とリクエストがあったので、僕から依頼を出したところ、なんとクラス全員分の細かい成績表が僕に送られてきて、「君から送っておいてくれるかな」とのこと。ムチャクチャである。「ちょっと僕からは…」と返すと、なんとクラス全員に対して、全員分の成績を開示してしまった。さらにムチャクチャである。経歴を見る限り、この先生は国家戦略のアドバイザリなんかを担当してきた相当なエリートのようなのだが、授業の質も生徒への気配りも、おいマジかよと言いたくなるようなレベルである。人間的に嫌いな人というわけではないのだが、700万円の学費となけなしの時間を投資しているだけに、こういうことがあると本当においおいと言いたくなってしまう。ちなみにその後で、プログラム・ディレクターからは僕に対して正式な謝罪の連絡があった。

 

☆☆☆

 

先週から、Grammerlyを使い出したのだが、これがかなり素晴らしい。時制や冠詞をかなりの精度でチェックしてくれる上に、類義語の提案もしてくれるので、パラフレーズをしなければならない際にはかなり助かる。例えば、「大成功」という意味のいい表現がないかを探していたら、”colossal success”という言い方を提案してくれたのが、これは僕一人ではちょっと思いつかない表現である。1年で15,000円くらいなので、業務で英語を多様する人であれば、かなり費用対効果の高い投資ではないかと思う。

 

ただし、ここまでで気づいた限り、このアプリケーションには弱点が少なくともふたつある。①あくまで文法のチェックが主眼であり、コロケーションの自然さは判定項目に入っていない、②Dangling modifierが文法上のチェック対象に入っていない、の2点である。したがって、①については別途Googleで調べて対応、②については自分で気をつけるしかないということになる。まあ②に関しては、結構ネイティヴの書く文にも見られるので(Based my observation, I think..とか)、許容範囲だとしているのかもしれない。日本語での「全然」の肯定用法みたいなものだろうか。

 

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20年来、Bon Joviの”These Days”のブリッジ部分に前のところの歌詞、”I know Rome’s still burning”という部分の意味がわからなかったのだが、ようやく納得のできる説明に出会うことができた。以下のサイト。

 

http://a-puri-a-puri.hatenablog.com/entry/2016/12/10/100300

 

曰く、「fiddle while Roma is burning: 大切なものが破壊されそうになっているのをよそ目に、何も手を打たない」という成語のもじりとのこと。つまりここでは、自分にとって重要な何かが失われていっているということを言いたかったわけで、これなら曲のテーマにも合致する。僕が昔読んだCD付属の歌詞カードには、「今も燃え盛るロメオの心」なんていうムチャクチャな和訳が添えられており、中学生ながらに「なんじゃこりゃ」と思ったものだ。

 

30代も半ばになった今だからこそよくわかる。この「ローマ」は、紛れもなく、歌の主人公にとっての自分自身であり、自分の実存であり、魂であったのだと。青年と呼ばれる時期を過ぎ、自分が夢見ていたもの、信じていたものが現実の前で力をなくしていく中で、自分の中の葛藤と必死に戦っている、そんな男のことを歌っていたのだ。Bon Joviはその立ち位置と、決してインテリジェントとは言えない音楽性のために嘲笑の対象となることも多いけれど、こういうところを抑えているあたり、やはり時の試練を耐えた一流のバンドであったのだなと思う。

 

さて、果たして僕にとっての「ローマ」は何なのだろう?それを自分の中に再発見するのが、僕にとっての差し当たっての課題である。