奥村幸治氏

一週間が終わった。今週はそんなにすることもないだろうと高をくくっていたのだけれど、契約書のレビューを中心に細かい仕事が多くなってしまい、結局こんな時間まで働いている。そういうものばっかり読んでいると、だんだんどっちが甲だか乙だかわからなくなってくる。僕はセンター試験の古文が5点(50点満点)というなかなか輝かしい成績だったのだけれど、そんな人間が何億円もの契約文書の修正なんかをしていると思うと、つくづく人生というものはわからないものだと思う。

 

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奥村幸治氏の講演会を観る。「夢を語るより目標を立てろ」、「ルーティン化しろ」、「ポジティブに考えろ」…とこう書くと怪しい自己啓発の本みたいだけれど、超一流の選手に関する豊富なエピソードを帰納的にまとめあげる語り口が上手く、思わず引き込まれてしまった。この人は自虐で笑いを取るのも上手いのだが、このあたりはやはり成功している男性の特権(ずるさ)なのかもしれないなあと思った。周りに同僚が多くいたのでなんとか我慢したが、イチローや星野さんに関するエピソードの箇所では泣きそうになってしまった。多分一人だったら泣いていただろうと思う。

 

改めて思ったのは、僕は努力する人が好きであるということだ。バッジョイチロー稲葉浩志…僕が憧れつづけてきた人たちは、皆努力が服を着て歩いているような人たちである。苦しんでのたうちまわりながらも努力して、努力して、もっと努力して、その先にその人しか見えない景色を見る――単純明快なそんな物語が僕は大好きだ。願わくば僕も死ぬまでそんな一途なバカでありつづけたいなあと思う。

 

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これからビジネススクールのエッセイを書く。これはいわば、2ヶ月を書けて書く、未来への自分へのラブレターだ。自分の過去をまっすぐに見つめて、奇を衒わずに自分を表現する――そう言ってしまうと平凡だが、これが簡単なことではない。考えれば考えるほど、自分の核のようなものがどこにあるのかわからなくなる。当然、その核を英語に移しかえるという難しさもある。

 

けれども、10年の職歴とそれ以前の自分をまとめて振り返る機会など、人生でそうあるものではない。そういう意味では、この作業は人生の後半をどう生きるかという問いに対する、僕なりの回答の下準備のようなものなのかもしれない。良いものが書けるといいなあと思う。