謝罪、英語、ファミレス

先週はトラブルと月次締め、それに予算作成が重なって、久しぶりに五日連続で帰りが23時を回ってしまった(まあ帰ることができるだけでありがたいといえばありがたいのだが)。トラブルはなかなか影響が大きく、日本のCFOシンガポールのディレクターからこっぴどく怒られたのに加えて、グローバルのCFOからも「お前のassumptionおかしくないか?」とメールが来た。相手が日本人だったらとらやの羊羹でも持って謝りに行くところだけれど、幸か不幸か海の向こうなので、apologiesと言う以外に何もできない。ずいぶん精神的には堪える出来事だったので、金曜日の終業時にはさすがに肉体的にも精神的にもひどく疲弊していた。

 

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そんな状態の中、土曜日は朝も早くから市ヶ谷にIELTSという英語の試験を受けに行く。ビジネススクールの出願にスコアが必要なためである。元々必要なスコアは4年ほど前に取得していたのだけれど、有効期限が2年以内ということで、今回再受験ということになった。

 

試験会場に行くと、自分よりもずいぶんと若い人たちが目立つ。レジストレーションをしたときには、僕の次の番号の人の生年月日が見えて、「1994年」とあった。おそらく大学生で、留学のアプリケーションのためにスコアが必要というケースだろう。僕よりも13年も後に生まれた人が、UKなんかに行ったりして現地でビールを飲んだり、難しそうな顔をしてハイエクを読んだりしているのだ。そう考えるとなんだか僕は、自分がところてん式にビジネスの世界に押しだされてしまったような気がした。

 

試験が始まる。リーディングとリスニングはまずまずだったのだけれど、ライティングで時間配分を致命的に間違えて、自分史上有数のクソエッセイになってしまった。お題は「大学生は親元を離れて暮らしたほうがよいか」というものだったのだけれど、僕の回答は「はい、金銭管理をする能力が身につくからです」という、小学生の作文レベルのものであった。曲がりなりにも高等教育を修了した人間が書くようなものではない。

 

スピーキングのテストまでずいぶん時間があったので、神楽坂の付近でランチをとって、ぶらぶらとあたりを散歩する。カラオケに入って予行練習をしようと思ったのだけれど、そんなことをしたら一人で「紅だァ――ッツ!」とかやってしまいそうなのが目に見えていたので、歩きながら独り言で練習をすることにした。城南地域に比べて、どことなく重厚感が感じられる街を歩いていると、同じ東京だというのにずいぶん遠くまで来てしまったような気がする。出版社ばかりが目に入るので、昔の嫌なことをかなり連想してしまい、ずいぶん気が滅入った。

 

で、スピーキング。出来はたぶんまあまあ。試験終了。

 

たぶん出願に必要な7点はとれているだろうと思う(9点満点)。なお、ビジネススクールだと、だいたい一流どころと言われているところは、最低点として7点を要求しているところが多い。Harvard、Oxford、Cambridge、INSEADは7.5点を要求しており、このあたりはこれらの学校のトップ校としての矜持が感じられる部分である。

 

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土曜の夜はとある友人と自宅近くのデニーズで会う。3年間のドイツ滞在から帰国したばかりの彼は、前に会ったときよりもずいぶん世慣れたような印象を受けた。「2社内定を受けているんだけれど、どちらに行こうか迷っているんだ」、と彼。というわけで、キャリアについてざっくばらんに話し、可能な範囲で僕からもアドバイスをする。

 

素朴な感想として、まだ今でも僕に相談がしたいという人がこの世に存在しているということが、僕としてはとてもありがたかった。この彼も2009年に死にそうだったときにずいぶんと世話になった人の一人なので、僕のささやかなアドバイスが彼のためになったのであったら、僕としても恩返しができてとてもうれしい。

 

それにしても深夜のファミレスというのは、独特の雰囲気があるなあと思う。日本という国に存在する「日本的なもの」が濃縮された空間のひとつではないかという気がする。