カリアゲ狂騒曲

急に気温が下がったせいか、なんだか微妙に体調がすぐれなかったので、この週末は意識して疲れをとるようにした。8時間ほどの睡眠をとって、外出を控え、栄養のあるものを摂る――とまあ、コンサバながらも教科書的な週末を過ごしたわけである。空き時間には金魚用の水槽を洗い、回転率の低い書籍を処分し、ふるさと納税の処理と生活必需品の発注を行った。不思議なのだが、こういう日常の面倒なことを整理していくと、体の中から疲れが抜けていくような気がする。もはや僕にとって、家の掃除(および雑事の処理)は数少ない趣味のひとつと呼んでもいいかと思うのだが、それは清掃という行為がこの疲労回復というポジティヴな副作用を持っていることと無縁ではないような気がする。

 

☆☆☆

 

11月のスペインでの授業に向けた航空券・ホテルの手配が完了。全部でだいたい18万円くらい。当地でもネットワーキングなんかがいろいろあるだろうから、たぶん全部で25万円くらいはかかるのだろう。フルタイムのMBAにかかる費用に比べたらなんてことのない金額ではあるけれど、鶏ムネ肉の底値を気にしているような日常から考えると(要するにケチなのだ)、やはりけっこうな出費である。正直な話、ビジネススクールというところにずっと行ってみたかったし、それなりの期待値もあるのだが、そこで得られるものという点では、僕はかなり懐疑的である。そもそもの出発点が、「生きるか死ぬかのビジネスが学校のお勉強でわかるのかよ」という極めて健全な批判的立場なので、まあこれは仕方ないだろう。そう思うと、「じゃなんでお前行くんだよ」となってしまうのだが、まあそれは「どうしても一度行っておきたかった」というふうにしか説明できないのかもしれない。

 

☆☆☆

 

北のカリアゲ君はだいぶアタマに血が上っているようで、戦争前夜ムードもずいぶん高まっているような印象を受ける。正直、東京に核ミサイルなんか飛んできたらもう祈るしかないと思うのだが、内閣官房サイトのガイドラインでは「地面に伏せて頭部を守る」なんていうずいぶんとおめでたいことが書いてある。八紘一宇時代と何も変わっていないではないか。

 

ともあれ、気休めながら、インフラが止まったときのことを想定して、数日分の食料を買いに行く。アルファ化米とレトルトおかずに、インスタントラーメン、そして水。「核の冬」状態になった場合でも、とりあえずこれで2、3日は生き延びることができるると思う――というのは少し楽観的に過ぎるかもしれないけれど。まあ前々から地震対策もしなければいけないと思っていたので、変な話だが一石二鳥といえるのかもしれない。

 

☆☆☆

 

帰りの新宿からの電車、魅力的な女性と目が合う。25歳くらいだろうか。その艶やかさは、僕の心の深いところにある、密やかな欲望と絶望をそっと呼び起こす。思い出すのはだいたい過去の後悔のことだ。語られなかった言葉と、触れられなかった髪、唇、乳房――思い返すのはいつもそんなことである。時が過ぎても、精神が成熟のほうへと向かおうとも、そうした思いが心の中から消えたことはないし、これからも未来永劫消えることはないだろう。

 

密やかな絶望――おそらくそんな満たされない思いを抱えながら、僕は繰り返される明日を、そして平坦な未来を生きるのだろう。カリアゲ、僕の記憶装置を君のミサイルでぶっ壊してくれないかな、と思う。でも僕の心の声は届かない。カリアゲに届く前に社会的に抹殺されるからだ。