罵詈雑言列伝

先週ほどではなかったにせよ、今週もハードな一週間だった。学校のペースは少し落ち着いたのだが、今度は仕事でトラブルが立て続けに起こり、さすがに帰宅後にPCに向かうのが難しかった。その中で、自分にとってはなかなか衝撃的な一言もあったので、今回はその点について主に記載する。

 

☆☆☆

 

人生で僕が直接受けた批判というか、要するに叱責の言葉で特に印象に残っているのは以下のものである。10代~30代までで一言ずつ挙げてみる。

 

10代…「お前はバカだ」

―高校時代の英語教師から。シンプルだがなかなか力強い一言である。今だったら「うるせえな、バカなんだからしょうがねえだろ」とでも言えるだろうが、当時はそんなこととても言えなかった。そういえば、高校のときに「バリゾーゴン」という映画が強烈な宣伝をしていたのを今でも覚えているのだけれど、あれは結局なんだったのだろう?

 

20代…「You are no meaning」

―当時の客先のマネージャから。これはなんといっても破格構文なのがいい味になっている。一応英語ということもあって、言われたときには精神的なショックはあまりなかった。

 

30代…「僕はもうあなたを信用しない」…New!

―会社のNo. 3(一応、直接のレポートライン)にあたる人から。これが今週のハイライトであった。こちらからしてもいろいろ言いたいことはあるのだが、とにかくこの一言が発せられたことの意味は重い――おそらく、発せられる言葉として適切なものではなかったと思う。たぶんこんなことを直接言われる従業員というのもあまりいないのではないか。

 

番外編…「ダメに決まってるじゃない」

―一応当時友人であった女性から。僕は彼女のことが女性として好きだったのだが、いろいろあって「ダメ」であった。この一言の肝はなんといっても「決まっている」というところで、これはアプリオリな可能性の否定を含意している。女性から、男性として受容されるという可能性を先験的に否定されるといのは、「今そうである自分がかつてそうであったもの」の否定に他ならないので、平たく翻訳すると「過去に戻って死んでくれ」という意味になる。幸か不幸か死にはしなかったが、僕は人生で初めて心療内科行きになった。

 

たぶん人生の中で僕はもっといろいろな罵詈雑言にさらされてきたのだろうが、人間の持つ忘却というすばらしい能力によって、それらの多くは少なくとも記憶の表面には残っていない。それでも、いくつかの言葉は決定的に記憶される。シニフィエもレフェランも失った、純粋なシニフィアンとして。そしてそのシニフィアンは、言葉の発せられた元のコンテクストを離れて、現実の個別の状況と結びつき、暴力的に次のシニフィエをつむぎ出していく。まるで切除した悪性腫瘍がほかの部位に転移していくように。記憶された言葉の暴力が根源的に切除されることなどありえないのである。もう傷は傷として記憶されるしかないのだ。そういえば三浦和良がフランスワールドカップ前に代表を外されたときも、同じようなことを言っていたような気がする。

 

ともあれ、個人的には言葉はそういうふうに使うべきではないし、少なくとも僕は、とりわけ組織の中ではそういうことはしたくないなあと強く思った。

 

☆☆☆

 

もう年末なのだが、今年は年の瀬までいろいろとバタバタとしそうである。仕事・家庭・学校の三本柱に加えて、法事、新しいプロジェクト、ちょっとしたメディアの取材、いくつかの送別会・忘年会と、29日くらいまでゆっくりできそうにない。そういえば、喪中はがきをまだ出していなかった…月曜にすぐ出さなければ。