シンガポール

チャンギで成田への飛行機を待っている。時刻は朝の5時で、とても眠い。ボーディングまで1時間強の時間があるので、この3日間のことを少し詳しく記載する。

 

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というわけで、久しぶりにシンガポールにやってくる。前に来たのは4年くらい前のことなので、それなりの懐かしさみたいなものがあってもよさそうなものだが、そういった感慨のようなものはほとんど感じない。日本から最も訪れやすい都市のひとつであるということが、旅行につきものの感傷のようなものを薄くしているのかもしれない。実際、少なくとも数日間の滞在であれば、シンガポールの生活と東京での生活は、正直ほとんど変わらない。というか、例えば、思いつきでランチに誘えるような友人の数なんかを比べたら、僕の場合はおそらくシンガポールのほうが多いのではないかという気がする。一般的な傾向として、日本はどうしても結婚というイベントを機に、個人間の距離が遠くなってしまう傾向があると思う。

 

ともあれ、クラスメイトたちとも無事再会し、プログラム・ディレクターにも挨拶する。「いやあ、大変ですけど、なんとかやってますよ」と言うと、彼女は僕にこう言う。

 

”This programme is very intense. It is how it was designed. This programme crushes you, and mold you.”

 

要するに、今までのあなたを一度粉々にして、作り直しますよということだろう。Moldってこういうふうに使うんだなあと思った。果たして新たに形作られる自分の姿はどんなものになるのだろうか。

 

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今回の目的である3日間の集中講義を受ける。受講した科目についてそれぞれ感想を記す(おお、なんかMBAブログみたいだ)。

 

Corporate finance

 

いわゆる投資判断の授業で、DCFとマルチプルの実践的な使用方法を勉強する授業。個人的にはずいぶん前に勉強した内容だし、実務でも使っているのであまり目新しさはなかったが、多くのクラスメイトは感銘を受けていたようだった。まあ確かに、このあたりの内容は「まさにMBA」と言えるものだと思うし、日常生活レベルでも非常に役に立つので、彼ら・彼女らの感想はもっともだなと思う。このブログを読んでいる人で、このあたりの議論に興味のある方がいれば、グロービズから出ている『MBAファイナンス』を一読することをお勧めする。通常のMBAで習う以上の内容をカバーしている名著だと思う。

 

Marketing

 

いわゆるマーケティングの授業で、今回はStarbucks・新興のピザチェーン・Doveと3つのケースについて議論した。議論のフレームワークは5Pだとか4Cなんかの古典的なものが多く、正直あまり目新しいところはなかった。財務なんかだと、結局は数字でのインプット・アウトプットになることが多いので、英語力の差が議論の質に影響するのは比較的少ないのだが、マーケティングのように感覚的な要素が入ってくると、どうしても英語力がモノを言ってしまうところがあって、若干の歯がゆさを覚えた。DoveのCM分析はなかなか面白かった。

 

Critical thinking

 

いわゆるロジカルシンキングの授業かと思ったのだが、どちらかといえばクライシス・マネジメントに近い内容であった。会社にとって損失になりうる事象が発生したときに、CEOとしてどう対応すればよいか、判断を早く行うにはどうすればよいかなどが論点であったが、おそらくは僕の英語力不足で、あいまいな理解に終わってしまった。例えば、ApologiesとSorryの違いなどは興味深く聞いていたのだが、いまいち理解できなかった。

 

だいたい講義はそのあたりで、あとはプロジェクト関係の打ち合わせとキャリアカウンセリングで今回は終わり。毎日の宿題は前よりも少なかったのだが、そのかわりに毎日夜中まで派手に飲んでいたので、前に劣らず疲労感は濃い。それにしても、36にもなって、「男女の友情は成立するか」なんてことを話していることを考えると、どこもmoldなんかされてねえよと、我ながら突っ込みを入れたくなってしまう。

 

というわけで、2月の遠征はこれで終わり。明日提出予定の宿題がひとつあるので、まずはなんとか今日中にそちらを終えてしまいたいところである。