連休はどこに消えた

連休中に書くと言っておきながら、結局まだ書けていないので、申し訳程度にいくつかのアップデートについて書いておく。

 

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大型連休という名の自宅軟禁奨励日は、娘の学習サポートと多少の仕事、読書で瞬く間に過ぎていった。とはいえ、20年来読みたかった『怒りの葡萄』を読み通せたという点では、実り多い時間だったと言えるかもしれない。プロットとしてはやや退屈ではあったけれども、苦難の時代のアメリカを生きる民衆のやるせなさや強さは充分に感じることができたし、物語と交互に登場するスタインベックの独白は、有無を言わせぬ迫力に満ちたものだった。コロナもまた、世界のどこかで、これだけの普遍性を備えた芸術作品を生むのだろうか。

 

夏休みにはぜひ『ゴリオ爺さん』を読みたいと思う。年を重ねたからだろうか、普遍的なものへの憧れが年々強まっているような気がする。

 

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相変わらず長時間労働が続いている。連休明け一日目の仕事が終わったのは27時であった。もう40も近いのに、こんな働き方を続けているというのは本当によくないなと思う。仕事の罪深いところは、よくないとは思いつつも、やれば結果も出るし、ある程度認めてくれる人もいるので、中毒になってしまいやすいところである。日本人はこの準麻薬的活動を戦後75年ひたすらに称揚してきた――というのは言い過ぎかもしれないが、耶蘇教のように罪の一種として捉えてきたというのは少なくともないだろう。思えば、僕は30代のほとんどをPCとコーヒーとともに過ごしてきたのだ。なけなしの時間と体力を切り売りしながら。それ自体は否定できるものではない、少なくともそれらは多少の富を僕にもたらしてくれたのだから。ただ、これは都会で暮らす非人称的な外資系サラリーマンの人生であって、僕の人生ではないのだ――そんな気がする。

 

書けば書くほどミッドライフ・クライシスにはまっていく、そんな気もする。

 

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『秒速秒速5センチメートル』のモノローグを集めた動画。明里の声を聴いていると、自分が失ってきたものの大きさを感じて、妙にセンチメンタルになってしまう。声だけで郷愁をここまで掻き立てるというのは、もう天賦の才としか言えないなと思う。

 

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