過去からの手紙たち

 

また一週間経ってしまった。急に寒くなったので、こたつを出したり、今年初のおでんを煮込んだりと、なんというかひどく小市民的な生活を相変わらず送っている。もう少し生活に柔軟性を持たせたいのだが、今年度内は家庭内のタスクが重いのと、仕事が年一番の繁忙期に入っているため、個人的にはほぼロボットのように暮らしているような感覚である。そんなわけもあって、テレビから週末にSlackの通知音が聞こえたりすると、ひどくぐったりとしてしまう。どうやら人間は完全なロボットにはなれないようだ。

 

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ネットニュースをチェックしていたら、高校時代のクラスメイトが参院補選で当選確実という記事が現時点でのトップニュースになっている。おそらく彼の政治的な立場は、現在の僕の思想的・政治的な考えと異なっているとは思うけれど、旧友が大きな舞台で活躍してくれるというのは、やはり僕にとってもうれしいことだ。もちろん勝ったからというのはあるのだろうけれど、久しぶりに見た彼は、なんというかとてもいい顔をしていた。10年くらい連絡をとっていないけれど、久しぶりに会ってバカな話でもしたいなあと思った。

 

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インターネットでB’zミスチルがコラボレーションした”Everything”を聴く。これらのミュージシャンや曲は、半ば僕が青春を送った年代の通奏低音のようになっており、好きとか嫌いという次元の話では語れないようなところがある。当時を考えるとちょっと驚いてしまうようなこのコラボレーションは、9月の合同コンサートで収録されたものである。実は、時間が許せばこのライヴに足を運ぼうと思っていたのだが、日程・場所・状況などを考慮してチケット取得には動いていなかった。ともあれ、この録音を聴くと、90年代を生きた一人の人間としてはやはり感慨深いものがある。現場で聴いていたらおそらくイントロからひたすら泣いていたのではないかと思う。その感覚を的確に表現するのは、おそらく言語という手段は不自由に過ぎる。

 

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久しぶりにラヒリを読んでいる。『停電の夜』(なぜ邦題は『病気の通訳』ではないのだ?)。正確に言えばこの本を日本語で読むのは初めてであり、原文とのニュアンスの差が興味深い。僕の印象だと、小川先生は比較的シンプルな日本語を好む傾向があるので、彼女の文体には相性が良いのではないかという気がした(逆にフィッツジェラルドのときは、元の文の華やかさがややスポイルされているような印象を受ける)。このきわめて優れた女性作家の文庫本を片手に、また今日も夜は更け、秋は深まってゆく。