ヘロヘロ世代

以下は2012年とけっこう古い記事なのだが、自分のことを書いてくれているのではないかというくらいにタイムリーな内容のでリンクを貼っておく。

 

http://www.economist.com/node/21560546

 

要旨は以下のような感じである。いかにもEconomistらしい上質な英文で書かれているので、英語が得意な方はぜひ原文を参照されたい。

 

「かつて40代は年老いた親と思春期の子どもに挟まれる「サンドイッチ世代」として生きづらいものとされていたが、最近では人生で最も生きづらいのは30代となっている。子どもを持つことが遅れ気味になっている(30代)になっており、仕事盛りのタイミングがそれと重なりやすくなってきていることが原因。彼らは人生で最も仕事が忙しい時期に子育てが重なる、「ヘロヘロ世代 generation exhausted」である。この時期は、人生で最も友人が少なくなりがちで、そういった関係を育む時間もなく、有給をとることもままならない。解決策となりうるのは、やはり会社側の柔軟な対応であろう」

 

会社でこれを読みながら、ふんふんと一人でなんども頷いてしまった。しかもここで前提とされているのはおそらくUKの会社だろうから、長時間労働がデフォルトになっている日本ではこういった傾向はなおいっそう強いのではないかと思う。とはいったものの、会社がなにかしてくれるなんてことは100%ないので、ここを人生の勝負どころと思ってがんばるしかないわけである。ネガティヴに言えば、このあたりの短絡的思考が「竹やりで戦車に立ち向かう」的というか、アジア的な非効率性の温床なのかもしれない。でもやっぱり「子どもは公的サービスに任せりゃいい」なんて割り切れるほど単純なものじゃないよなあと思う。自分の子どもだもの。

 

☆☆☆

 

金曜の夜、無味乾燥な利益率の計算にほとほと嫌気がさしたので、久しぶりにポール・ユーンの『かつては岸』を読む。もう、泣きたくなるほど染みる。一文一文がセピア色なのだ。いつか確かに自分の目の前にあって、はっきりとその匂いをかいだけれど、今はもう存在していない愛しいもの――そんなものを慈しむ感情が、一文一文からあふれ出ている。一篇目の「かつては岸」を読みきったところで、過去への憧憬と切なさに耐えられなくなり、そっとページを閉じる。大好きな本だけれど、気持ちがいっぱいになってしまうからあまり読めない。

 

以下はこの作品での好きな一文である。本の帯にも使われているので、きっと翻訳者・編集者にとっても印象的な部分だったのだろう。泣きそうになる。

 

「あまりに一瞬の出来事で、男たちがそれ以外は感じずに済んでいてくれていたらと彼女は願った。人生がもう終わりなのだと知るころには、彼らはすでに海のなかで、目を閉じて海の深みに身を委ねてくれていたらと」(前掲書、31ページ)

 

☆☆☆

 

日曜日は広尾にぼんやりと散歩に行く。相変わらず無駄にハイソで、とても多国籍である。有栖川公園の中をのんびりと歩いていると、フュージョンが聴こえるので、どれどれと演奏会場へ行く。柏のPasso a Passoというグループとの由。天気が良かったこともあいまって、疾走感のある曲がとても気持ちよかった。野外でWeather Reportを聴いたら、たぶんこんな感じになるのだろう。特に印象的だったのは最後の曲で、青春賛歌全開な感じでとても爽やかだった。こういう曲を聴くと涙腺が弱くなっていけない。音楽はいいなあと思った。 今度見る機会があったら、ぜひ"a remark you made"を演奏してほしい。