欲望のかなたに

仕事が本格的に始まってまだ2日だというのに、もうかなり疲れている。年初のプランニングについての重い仕事がこの1月上旬~中旬にかけて集中しているためである。僕の勤めている会社は、とにかく文書化が命という絶対的なカルチャーがあるため、学位論文に追われている学生のようにワードをパタパタと叩いている日々である。

 

☆☆☆

 

ほとんど買い物ができなかった昨年の反動からか、昨年末から家具や洋服に集中的に投資を行っている。とはいっても、だいたい欲しいものをすべて買っても、中古のマーチと同じくらいの値段だから、まあ大したものではない。それに関連して、今回自分が買いたいと思うものをすべてリスト化して予算立てもしたのだが(一種の職業病かもしれない)、自分の洋服関係でほしいものはすべて足しても10万円をすこし上回る程度だった。あと、時計・靴・バックでそこそこのものを買っても、まあ50万円あればお釣りがきてしまう。まあ我ながら小市民的だなと思う。おそらくあまり所有するという行為自体にも興味がないのだろう(だからクラウドビジネスに関わっているのかもしれない)。

 

上記に加え、昨年一年間分のちょっとした感謝を込めて、妻にはスイートテン・ダイヤモンドをプレゼントした。ママチャリで田んぼを走り回っていたような人間も、横浜元町でダイヤを買うようになるのだなあと思うと、なかなか感慨深いものがあった。

 

☆☆☆

 

読んだ本。

 

柴山和久『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』

 

冗長なタイトルは、もう少しなんとかならなかったのだろうか。

 

それはそれとして、著者――というか、著者の経営する会社――のことは前々から気になっていた。日本のFintechの中でも、啓蒙的で、真っ当なサービスを提供しようとしている会社のように思えたからだ。とはいえ、その真っ当さゆえに、投資(特にアクティヴ投資を)をすでに行っている人にとっては、やや本書は退屈かもしれない。その真っ当さが、資本主義の持つ奪い合いという側面を捨象してしまっているように思われる。もちろん、そうした側面を強調するのは、本書のテーマにはそぐわないのだろうが。

 

個人的に、この本の好きなところは最後の章である。著者の金融にかけるパーソナルな思いが、ストレートに伝わってくるからだ。残貯金8万円のエピソードの部分などは、それなりにお金のない時間を過ごした者として、なかなか身につまされるものがある。著者の経歴の派手さ(東大法→財務省→HLS→INSEAD→McKinseyというエリートのロイヤルストレートフラッシュのようなキャリア)と、苦労話とのギャップというのが、本書のひとつの魅力といえるかもしれない。まあこういう経歴の人だと、書かれていない苦労もいろいろしているのだろうが…。

 

☆☆☆

 

ベートーヴェンピアノソナタ、31番を繰り返し聴いている。たぶんこれが今の気分なのだろう。20歳そこそこの頃には理解できなかった曲のひとつだ。37歳の今、その響きに少なからず救われている自分のことを思うと、曲りなりにも大人になったのだなという気がする。救済——。僕はまだなにかに救われることを欲しているのだろうか。