避難訓練

子どもの「避難体験」的なイベントで、土曜から日曜にかけて、小学校に宿泊する。「1年生はまだ一人で泊まることに不安があると思われるので、親同伴で宿泊するように」という原則にしたがっての措置である。というわけで、PTAとしての奉仕活動(児童の受付)を滞りなく終えた後、そそくさと指定された部屋に移動し、マットを敷いて寝る。周りに6~7歳の女児がわらわらと雑魚寝しているという、ペドフィリアには垂涎ものの状況だが、正直僕にとってはうるさいだけである。当然、床も固い。シーリーのベッドなんかに比べると27倍くらい快適さでは劣るのではないかという気がする。案の上うまく眠れず、午前1時くらいまであれやこれやととりとめのないことを考えていた。例えば――同時性について。僕がここで眠れない夜を過ごしているときに、高江では人々が当局と闘い、ドイツでは乱射事件で愛しい人を失った人が悲しみに暮れ、そしておそらく五反田のホテルでは少なくない数のカップルが絶頂を迎えているのだ。悲劇とも喜劇ともいえない、おそらくは真実であろうその事実について考えると、単純に僕は不思議な気持ちになった。ビートルズの”A day in the life”はそういうことを歌った曲なのかなどと考えているうちに、僕は浅い眠りに落ちていた。隣では長女がすやすやと寝息を立てていた。

 

朝。ずいぶん早く目が覚めてしまったので、教室にあった小学館『図鑑 宇宙』のページをぱらぱらとめくる。木星のメタンついての記述を読んでいると、まわりの女児たちが目を覚まし始める。「なにを読んでるの?」

 

6:30、校庭に出て、ラジオ体操に参加する。体のあちこちが痛むが、空気が澄んでいてなかなか気持ちいい。きちんと第二までこなしたあとで、周りの親御さんたちに申し訳程度の挨拶を済ませ、僕はそのまま家路についた。熱いコーヒーが飲みたかった。

 

☆☆☆

 

何を思ったのか、次女を連れて二人で代官山に行く。たぶん普段できないウィンドウ・ショッピングでもしたかったのだろう。ベビーカーを押していると、少なくない数の人から声をかけられる。スマートフォンに夢中で、周りがロクに見えていない人々がやけに目につく。たぶんポケモン捕獲に必死なのだろう。

 

1時間半ほど街をウロウロしたが、結局ほしいものはひとつも見つからなかった。18歳のときにあれほど煌びやかに見えた数々のショップたちも、ずいぶんと輝きを失ってしまったように見えた。たぶん僕のほうが都会に慣れすぎてしまったのだろう。というわけで、公園でパンをかじり、子どもに和光堂のレトルトフードを食べさせて、コンディヤックの『論理学』を本屋で買い求めたところで、そそくさと当地を後にした。もう18歳ではないのだな、と思った。

 

☆☆☆

 

夏休みまでもう少しだ。がんばろう。